みんみんみん、じー…。

蝉の声が鳴り響き、昼下がりの太陽の光は容赦なく地上へと降り注ぐ。

その光を受けて、田舎道には二つの影が揺れていた。

「もうすぐ…夏休みだね、優くん」

「そうだね、雫は旅行の予定とかあるの?」

「うん、私は――…」

早坂雫(はやさか しずく)と石崎優太(いしざき ゆうた)は、

この日も仲睦まじく下校の帰路を共に辿っていた。

付き合ってから一年が経ち、二人は穏やかな幸せの中にいた。

夏休みになったら、どこに行こうかな―――。


だが、夏休み直前のある日、雫は偶然の再会を果たすことになる。

昔から大好きだった幼馴染の「お兄ちゃん」がこの田舎に帰省したのだ。

お兄ちゃんは何年も前から一人で上京していて、本当に久しぶりの再会だった。


神社の境内で腰掛け、雫とお兄ちゃんは懐かしさを
噛みしめながら話に華を咲かせていた。

(お兄ちゃん、なんだか前よりも、もっとかっこよくなったなぁ…)

そんなことを考えていた…その時だった。

「きゃっ…!!」

お兄ちゃんは、雫の体を押し倒して…迫ってくる。

嘘…ウソだよね? あの優しかったお兄ちゃんが…なんで……?

憧れのお兄ちゃんの変貌ぶりに混乱する雫だったが、
抵抗空しくそのまま体は重なってしまい――…。

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